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Lyric
金木犀のころ
Ritsuko Toeda
芳しい香りが庭に舞って
手をとめて空を仰ぐ
そんな気持ちにさせてくれる
金木犀の花が咲くころ
庭の土が太陽にそそがれて
寝そべる陽だまりにも
その香りがうつされて
心ときめいていく
あなたが帰ってくるまで
若い秋風に思いを馳せて
木々とともに立っていた
ときに小さく
途方もない気持ちになるけれど
風のようには
どこへも行けない
朝露と、鳥の声を追いながら
満ちていく
あなたとの日々
金木犀の咲く
この美しい家で
そうして僕たちは
静かに年をとったけれど
金木犀の花は
今も瞬いている
ゆく川の流れも
僕たちの小さな人生も
ただ、この大地に揺れて・・
いま、わたしたちの孫は
黄昏 ( たそがれ ) の絨毯のように
金木犀の花が散った庭で、
やさしい木々に守られている
そうして僕たちは
年をとったけれど
金木犀の花は
今も瞬いている
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